脳とフレーム問題

投稿者: | 2015年6月5日

 

ダニエル・デネットによる問題提起

脳の働きを考えるため、コンピュータをベースとした人工知能と比較してみましょう。

アメリカの哲学者である、ダニエル・デネットが “COGNITIVE WHEELS: THE FRAME PROBLEM OF AI” に書いた人工知能のお話を簡単にご紹介します。

 

むかしむかし、R1というロボットがありました。

ある日のこと。

R1は、命ともいえる予備バッテリーが置いてある部屋に、時限爆弾が今にも爆発するよう仕掛けられたことを知ります。

「バッテリーを部屋から運び出す」というようにプログラムされていたR1は、部屋に行って鍵を開けます。

ワゴンに乗ったバッテリーを見付けたR1は考えます。

バッテリーを部屋から出すにはワゴンを引っ張りだせばよい、と。

かくして、バッテリーは部屋から運び出せました。

しかし、部屋の外で爆弾が爆発してしまいます。

爆弾も同じワゴンに乗っていたからです。

 

R1推測型

ロボット開発者は考えました。

目的とする物だけについての行動計画だけでなく、その行動を取ったことで起こる副効果(side effects)についての結果も推測するようにプログラムすべきだと。

そして、推測機能を付加したR1推測型は先ほどと同じ問題に取り組みます。

部屋に行ってドアを開け、バッテリーと爆弾が乗ったワゴンを見付けます。

今度は、爆弾も一緒に乗ったワゴンを引っ張り出すことはせず、推測を始めたR1推測型。

推測の結果、このワゴンを引っ張りだしても部屋の壁の色は変わらないという帰結を得て、ワゴンを引っ張り出しました。

やはり、部屋の外で爆弾が爆発してしまいます。

 

R1推測関係性判断型

ロボット開発者は考えました。

目に入る全ての物について、取った行動による帰結が関係あるかないかを判断し、関係ない場合は無視するようにプログラミングしました。

そして、その関係性判断機能をプログラミングで付加したR1推測関係性判断型は、また同じ問題に取り組みます。

R1推測関係性判断型は、例の部屋に行ってドアを開けます。

部屋の前で立ち尽くすロボット。

ロボット開発者
「何してるんだ!」

R1推測関係性判断型
「してますよ! 何千もある帰結が関係あるかないかを急いで判断して、関係なかったら、関係なしリストに載せているのです。それから、、」

そのとき、部屋の中の爆弾が爆発。。

 

脳とフレーム問題

これは、「フレーム問題」といって、人工知能の分野で難問の一つとされています。

起こる可能性のある事態の全てを有限の時間の中では処理し切れないので、対処すべき問題を抽出する必要がある。

つまり、枠(フレーム)の中だけに限定して処理しないといけないということです。

ヒトの場合は、これを難なくやってのけます。

とっても柔軟な情報処理能力を持っているのですね、脳は。

コンピュータは、外からアルゴリズムやプログラムを与えておいて、入力したデータはそれに従って処理されるので、プロセッサベースアーキテクチャと言われます。

それに対して、脳は、体験を通して、知識や経験を脳の中に格納しておいて、入力したデータはその格納されたもののどれに同じか、似ているか、関係するかといった検索して出力するので、メモリーベースアーキテクチャ。

そうなのです。

ヒトの脳で処理することのほとんどは、答えを考えだすというよりも、脳の中にある答えを検索して引き出しているだけなのです。

ということで、脳はフレーム問題にひっかからないのですね。

 

(了)

 

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